家族葬や核家族化など社会情勢の変化に伴い、年末の喪中はがき(喪中欠礼状)で訃報を知るというケースが増えてきました。
従来の習慣では、喪中はがきをいただいたら、年明けに寒中見舞いを送ることがしきたりとなっていました。しかし、訃報を知ったのに1か月近くも何もしないのはいかがなものか。そんな問題意識を持つ人が増え、「喪中はがきをもらったら喪中見舞いを送る」という新しい習慣が注目されています。
喪中見舞について
喪中見舞いという習慣
近年の状況
郵便局が運営するサイト「郵便年賀.jp」でもこのように紹介されています。
Q. 喪中はがきを受け取った場合にはどうするか?
A. 「喪中はがき」を受け取った場合は、松が明けてから2月初旬頃までに着くように、「寒中見舞い」を出すということが慣習となっています。しかし、「喪中はがき」は、11月中旬から12月初旬に届くので、「寒中見舞い」を出すまでに1ヶ月半ほど経ってしまいます。そのため、忘れてしまったり、出さないで終わってしまう方が多いようです。そこで、出す時期が決められた「寒中見舞い」ではなく、喪中をお見舞いするという意味の「喪中見舞い」にすれば、時期にとらわれず、受け取ってすぐに気持ちを伝えることができます。
「喪中はがき」を受け取ったら、「喪中見舞い」でお見舞いの気持ちをお伝えしてはいかがでしょうか。
日本グリーフケアギフト協会が提案する喪中見舞い
「喪中見舞い」は近年注目されるようになった新しい習慣なので、文例なども少なく「どのような文章をつづればよいのか」と悩む方も多いようです。
日本グリーフケアギフト協会は、喪中見舞いにおいて「故人の個性を尊重する」ことと「ご遺族の心のケアを意識する」ことを提案します。
故人の個性を尊重したおたよりにする
生前の思い出やエピソードを記す
遺族にとって、故人のありし日の出来事を知ることはうれしいものです。グリーフケアのワークでは故人について語り合うことがありますし、カウンセリングでも故人との思い出話を聞いてあげることが大切だと言われています。
ぜひ一言、故人のありし日の姿をご遺族に伝え、「死別後も思い出はなくならない。思い出せばいつでも会える」ということに気づかせてあげてください。
故人の名前を記入する
また、遺族にとってはかけがえのない大切な人が、死別後は「故人」とひとくくりにされ名前を記されることもなくなるのは寂しいものです。ぜひ亡くなった方のお名前を記してあげてください。
ご遺族の心のケア(グリーフケア)を意識した言葉を添える
遺族を気にかけていることを伝える
自分が残念にさびしく思う気持ちを訴えるお手紙をよく目にしますが、ご遺族はそれ以上に悲しんでいます。また「あの時自分がああしていれば」と後悔の念にかられる遺族も少なくありません。そんなご遺族を追い詰めることのないよう、一呼吸おいて、あなたの気持ちを控えめに伝えてください。
力になりたい気持ちを伝える
具体的に何かをしなくてもよいのです。死別直後の遺族はそっとしておくのが一番。しかし、中には無神経でおせっかいな方がいて、突然訪問したり無遠慮な電話をよこしたりして、疲弊してしまう遺族も少なくありません。
無神経な人が遺族を傷つけ、思いやり深い方は接触を控える。こうして現代の遺族は孤立にさらされることになります。
お手紙で「あなたのことを想っている」「何か力になりたいと思っている」そうお伝えし、連絡を待つ。死別直後は何の反応もできない遺族がほとんどでしょうが、ふと一息つけたた時、あなたの思いやりとお気持ちをありがたく感じることになると思います。
いかがでしょうか。
「失礼のない内容にしなければ」と儀礼だけにこだわったお手紙は、かえって遺族の孤独感をあおることが多々あります。
喪中見舞いの文例
これらのことをふまえ、このような構成を提案しています。
喪中見舞いの構成
ご挨拶文
例:○○様のご冥福を心よりお祈りいたします。生前の故人との思い出などを記します。
例:あなたとの二人旅の様子を、○○様がとても楽しそうに話されていたことを思い出します。つなぎ文
例:そんな○○様を亡くされ、さぞかしご心痛の日々かと思います。
4.ご遺族の体調を気遣う言葉を添えます。
例:寒さ厳しき折、何卒お身体を大切にお過ごしください。
上記の構成で「故人の個性を尊重する」ことと「ご遺族の心のケアを意識する」ことを意識した文例です。
喪中見舞いの例
○○様のご逝去の報に接し心よりお悔やみ申しあげます。
毎年この季節になると職場で年末年始の家族旅行のご予定を楽しそうに話されていた○○様のことを思い出します。
今年は○○様のお話を聞くことができなくて寂しく感じています。
私ですらそうなのですからご家族の皆様はどんなにご心痛の日々かと心を痛めております
私で何かお役にたてることがあればと思います。
話し相手が必要でしたらぜひお声がけください
避けた方がよい言葉
参考までに、グリーフケアとして「遺族にかけるのを避けた方がよい」とされている言葉を記します。
時と場合によると思いますが、参考にしていただければと思います。
励ましや激励
「頑張って」「早く元気になって」
「こんなにつらく悲しい思いをしているのにこれ以上どう頑張ればよいのか」と途方に暮れてしまいます。
悲しみの比較
「まだ良い方」「まだマシ」
かけがえのない人を失ったのです。他者との比較は意味がありません。
気休めの同意
「お気持ちはよく分かります」
全く同じ経験をしている人はいません。「自分はこんな経験をしたがこう立ち直った」という自慢も遺族へのなぐさめにはなりません。
回復の早さを称賛
「元気そうで安心した」
元気なわけがありません。元気そうに振る舞っているだけなのです。
性急に前進することを推奨
「忘れるのが一番だ」「早く次のお子さんを」
必要なだけ悲しみにひたる時間が遺族には必要なのです。あなたが決めることではありません。
故人を勝手に代弁する、死の意味を押し付ける
「それでは故人が悲しむよ」「神様が決めたこと」「成仏した」
他人のあなたが決めることではありません。あなたがそう思いたいと思う自己防衛の気持ちを遺族に押し付けてはいけません。
あなたがご遺族を想う気持ちは、きっとご遺族の力になります。
喪中見舞いの文章を考えることは困難な作業だと思いますが、このページがあなたの困難な作業の役にたてればと思います。